2011年10月2日日曜日

20 ラテラル・マーケティングとは

これまで存在しなかったカテゴリーや市場を作り出し、従来は顧みられなかったニーズや用途を満足させるという特徴がある。

市場を細分化して標的市場を絞り、ポジショニングを決定する。STPの過程は戦略的マーケティングには欠かせない作業だ。しかしこの手法では予め市場を想定してしまうしかない。その市場を細分化して不要な部分を切り取り、捨てる一方、標的市場に対してポジショニングし、マーケティング・ミックスを行う。これはコトラー曰く、バーティカル(垂直的)マーケティングである。
オペレーションの効率化の為には、こうした無駄だと思われた市場を切り捨てる作業は有効。しかし切り捨てた市場にチャンスが残っているのも事実。
ラテラル(水平的)・マーケティングはバーティカル・マーケティングとは180度真逆の手法である。

ラテラル・マーケティングはラテラル・シンキング(水平思考)を取る点が特徴。
これは既に枠組みにハマっている既存の情報を一旦ばらしてそこに新しい枠組みを見出すというやりかた。
ラテラル・シンキングでは、ベストな枠組みを探すのではなく、たくさんの枠組みを発見する事に主眼を置く。

今ベストであったとしても、将来にわたってベストで在り続ける保証はない。

バーティカルとラテラルは、相互補完的なものとして捉えたい。



2011年10月1日土曜日

19 ポジショニング

ターゲットの中に、自社製品を他社製品とは違うものとして認識させる努力をポジショニングという。

「ポジショニング」はジャック・トラウトとアル・ライズが1970年代末頃に提唱。

製品に対するポジショニングではなく、ターゲットの心のなかの位置である点に留意。

トラウト「狙っている客の心のなかで、あなたの製品をどう独自化するのかが、ポジショニングの本当の意味である」
つまり企業の都合で定義してはならない。

コトラーが提唱するのはこの方式。次の文章の()の内側に適切な用語を当てはめ、それが達成できるような方法を取ってポジショニングする。

「私たちは(ターゲット市場)に(私たちの製品)を(簡単なフレーズ)とみなしてほしいし、(競合する製品)より重要で、より有益だと思ってほしい」


「私たちは(スマートフォン市場)に(iPhone偽)を(安価なiPhone ) とみなしてほしいし、(iPhoneそのもの)より重要で、より有益だと思ってほしい」


ポジショニングを決めたら、そのセグメントにおいてNo.1を目指さなければ無意味。独自のポジショニングを築くというのは、そのセグメントでNo.1になるということ。

マイケル・トレーシー、フレッド・ウィアセーマのNo.1企業の定義。

1 経営実務面での卓越性
2 製品のリーダーシップ
3 顧客との親密性

これらのいずれかで、最高の評価をうけている。
この他にも、品質、特徴、技術、価格、重要性、独自性、卓越性、伝達性、先制性、収益性といった項目がある。



2011年9月30日金曜日

18 ターゲティングとは

細分化した市場の中から、自社にふさわしい市場を決めること。

セグメンテーションした市場の中から、ターゲットとなる市場を選ぶ事をターゲティングと呼ぶ。これによって選択された市場を標的市場と呼ぶ。

標的市場選定にあたり次の点を重視したい。

1 そのセグメントに魅力があること(外部要因)
・規模
・成長性
・セグメントの構造的な魅力
・安定性
・規模の経済
・習熟曲線
・企業の目標と経営資源

2 そのセグメントで成功する能力を企業が持っている事(内部要因)
・企業の能力
・相対的市場占有率
・価格競争力
・サービスプログラムの品質
・顧客と市場についての知識
・マーケティング活動の有効性
・地理
・収益性


市場の魅力に関するチェックポイントとしては以下のとおり。
セグメントの規模。またセグメントの成長性にも着目。参入障壁の有無、高低に関する「構造的な魅力」という部分も重視。
市場の安定性や、大量に提供することでコストが下がる、規模の経済の可能性。また慣れれば慣れるほどにコストが低下する習熟曲線効果なども重視。

また成功できるかどうかも検討すべき項目。

 相対的市場占有率が高ければ有利。価格競争力の高低も大事。セグメントに対する知識の深さも重要。

これらを総合して他社よりも有利な市場へ参入すべき。



2011年9月29日木曜日

17 セグメンテーションとは?

 同じような行動を取るグループを、集団化すること。市場細分化とも言われる。
 セグメンテーション・ターゲティング・ポジショニング(STP)について。

 市場が単一であると見做せた時代はマス・マーケティングが有効だった。
 現在は、共通のニーズを持つ集団に市場を細分化して、そこに製品を供給したほうが効率が高くなる。
 市場を細分化するという事をセグメンテーションと呼ぶ。細分化された市場はセグメントと呼ばれる。

セグメンテーションの際の基準、そのものが大事になる。

1 人口統計的変数(デモグラフィクス)
 年齢、世帯規模、家族のライフサイクル、所得、職業

2 地理的変数
 地域、都市、人口密度etc

3 心理的変数(サイコグラフィクス)
 ライフスタイル、パーソナリティ

4 行動上の変数
 利用頻度、利益、ユーザーの状態、利用割合、利用状況、ロイヤリティ、購買認知段階

5 製品・サービスの属性変数
 製品・サービスの品質、性能、サイズ、デザイン

近年は、行動上の変数が重視されている。企業やブランドに対する顧客ロイヤリティの度合いで顧客を細分化するロイヤリティ・セグメンテーションもそのひとつ。
 サイコグラフィクス変数は、スタンフォード調査研究所(SRI)制作のVALSが有名。
 VALSは対象者を価値観・ライフスライルでセグメンテーション。
 Japan-VALSもある。これは日本の消費者を3つのモチベーションで区分して、10のグループに分割。

Japan-VALS
「イノベーター」
 4%の革新創造派「新しいものに積極的な高感度消費リーダー」
初期採用者
 4%の伝統尊重派「日本の伝統文化を守り、継承する層」
 5%の社会達成派「キャリア・社会指向の強い良識層」
 6%の自己顕示派「レジャー・ファッション高感度享楽層」

初期多数派
 8%の伝統派アダプター「伝統尊重派に追従する層」
 14%の社会派アダプター「社会達成派に追従する層」
 12%の自己顕示派アダプター「自己顕示派に追従する層」

後期多数派
 22%の同調派「社会潮流に後から参加する層」
 17%の雷同派「社会の流れに鈍感な保守層」
 9%のつましい生活派「社会の流れに低関心な層」




2011年9月28日水曜日

16 S.W.O.T(強み、弱み、機会、驚異)

13〜15では、マクロ環境とミクロ環境の分析について紹介。
S(Strengths・強み)、W(Weaknesses・弱み)、O(Opportunities・機会)、T(Threats・脅威)の事。
強み、弱みは内部環境について。
機会、脅威はマクロ、ミクロ双方の環境を含めた外部環境について。

外部環境については、13のマクロ環境を分析する6つの要因や、イノベーション普及理論、キャズム、ファイブ・フォースを念頭に、3つの時代の変化を想定。
これらには機会はないが、脅威が潜んでいないかを検討。
内部環境の分析にはバリュー・チェーンを活用。
 これらを他社と比較して強みと弱さを客観視する。

   強み、   弱さ、
機会「事業機会」「   」
脅威「   」 「潜在的リスク」

このマトリックスで、1、自社の強みを活かせるのはどこか?2、自社の弱みを直撃するリスクはどこか。
成果を上げられるのは強みを活かした場合。弱みでは無理。弱みの克服ではなく、自社の強みに着目して、機会を探すべき。
これがSWOTによる戦略の立案の方法論。
「自社の強みを活かせる機会を探し、弱みを打ち消して脅威に備える」





2011年9月27日火曜日

15 キャズムとは?

イノベーション普及理論を採用する場合、ジェフリー・ムーアが提唱する「キャズム(裂け目)」を知っているといい。これはイノベーションが普及するための障害である。
少数派にとってイノベーションは便利なものだが、多数派にとってはそうであるとは限らない。そこで、イノベーションを普及させるためにはそれが使いやすこと、実利に直結することをユーザーに納得させる必要がある。
イノベーションを普及させるにはキャズムを飛び越えるマーケティング、すなわち多数派を納得させる努力が必要である。
キャズムは、初期採用者から初期多数派への移行期に発生する大きな裂け目である。これはあらゆる製品に対して必要。

キャズムを乗り越えるには「ニッチ市場を狙う」→「ホール・プロダクトの準備」→「クチコミ」→「ニッチ市場No1から周辺市場攻略を目指す」




2011年6月18日土曜日

14 イノベーション普及論

14 イノベーション普及論
ミクロ的外部環境分析の一つに「プロダクト・ライフサイクル」もある。
市場を「導入期、成長期、成熟期、衰退期」に分けるというもの。現在の市場のポジショニングが分かれば、アプローチの方法も変えられるという点で重要。

2011年6月17日金曜日

13 マクロ環境とミクロ環境について

マクロ環境「社会全体に関する要因」→「人口動態、経済、社会文化、自然環境、技術、政治及び法律」
「人口動態」→「人口規模、世代別人口、地域別人口・人口密度」
「経済」→「GNP、GDP、為替・金利水準、所得分布」
「社会文化」→「宗教、道徳観、文化的価値観」
「自然環境」→「国や地域の自然環境、環境問題、環境保護上の規制」
「技術」→「最新技術、技術特許、技術開発予算」
「政治・法律」→「産業界への法規制、産業界への政府助成、市場への政府介入度」

ミクロ環境は外部環境と内部環境とに分けられ、それぞれを「ファイブ・フォースとバリュー・チェーン(マイケル・ポーター)」を利用して評価する。

ミクロ環境における外部環境を「ファイブ・フォース(五つの競争要因)」で説明。
「ファイブ・フォース」→「新規参入業者、競争業者(ライバル企業)、代替品、買い手、供給業者(売り手)」

ミクロ環境における内部環境は「バリュー・チェーン(価値連鎖)」で評価する。
「バリュー・チェーン」→「主活動と支援活動」に大別。
これらは以下のように分類できる
「主活動」=「購買物流」→「製造」→「出荷物流」→「販売・マーケティング」→「サービス」
「支援活動」=「全般管理(インフラ)」「人事・労務管理」「技術開発」「調達活動」

これらを基準に自己分析し、他者との比較で強みと弱点を把握する。
ポーター「ミクロ環境分析のほうがマクロ環境分析よりも重要」

2011年6月16日木曜日

12 マーケティングの基本的なプロセス

パート2
マーケティング戦略の推進
「マーケティング3.0ではマーケティング2.0の考え方が必須

2011年6月15日水曜日

コラム1 ミッションとビジョンと価値観

コラム1 ミッションとビジョンと価値観

ミッションは存在証明であり、ビジョンは未来の姿であり、価値観は行動基準である。

ある企業は利益至上主義を取るかもしれないし、ある企業は道徳経済合一(渋沢栄一が解いた企業経営のあり方で、倫理観を最優先させる考え方)を優先させるかもしれない。


2011年6月14日火曜日

11 3iモデルとは?


コトラー「ブランド・アイデンティティ、ブランド・イメージ、ブランド・インテグリティ」の3つのiを指して3iモデルと呼ぶ。

2011年6月5日日曜日

10 スピリチュアル・マーケティングとは?


製品が基本的なニーズを満たすだけではすでに不十分である。これはマーケティング2.0の時代から明らかだった。
これを解決するためにSTPが生み出され、さらにブランド戦略も駆使されている。しかしこれだけではクリエイティブ社会では足りなくなっているというのが実情である。
コトラー「顧客は、人間の精神を揺さぶる感動、というニーズを持ち初めている

そのニーズに応えるために、企業は社会的コーズを解決するための方法論を明らかにし、そのための展望と価値観を提示して、社会的コーズに対して臨む必要がある

これをスピリチュアル・マーケティングと呼ぶ。

コトラー「その企業が人間の幸福のためにどれだけ貢献しているのかが消費者にみえれば、利益は自ずと付いてくる」と述べており、グラミン銀行はそのひとつ。

ジョセフ・ナイが指摘したソフトパワーとは「無形であるがゆえに否定できない魅力によって相手の行動を引き出す力」を指す。これは軍事力とは真逆の考えである。

つまり否定しようのない魅力としてのソフトパワーを企業が持つための方法論がスピリチュアル・マーケティングとなる






9 クリエイティブ社会とは?


経済学者のリチャード・フロリダは「クリエイティブ経済の時代の到来」を主張。
クリエイティブ経済とは、増えてきたクリエイティブクラスタが関わる経済のことを指す。またそうした経済が経済の中心となった社会をクリエイティブ社会と呼ぶ。

アメリカでは1900年では労働人口の10%だったこのクラスタが、2005年には全労働人口の30%にあたる4000万人に達している。

クリエイティブクラスの人間は、アブラハム・マズロー(心理学者)によると、自己実現の欲求が極めて高いと指摘されている。

自己実現の欲求とは、やりたいことをやって生活し、なおかつそれを世間に評価してもらいたいという欲求のことを指す。

つまり物質主義的価値観を越える価値観が生まれつつあるのである。

マズローが説く、5段階の欲求
生理的→安全→所属と愛→承認→自己実現(これを重視するクラスタが増えている)

クリエイティブクラスタとは「仕事の中心的な部分において創造性を発揮する事を求められている人々で、芸術家や作家、デザイナーなどを指す」



8 文化マーケティングとは?

グローバル化と社会不安とはセットである。そこで社会的なつながりを求めるニーズが強まる。そうしたニーズを満たす役割が企業に求められている。
企業が社会問題と向き合い、社会的大義、社会的主張(社会的コーズ)を明らかにし、その解決を目指す活動のことを社会的責任マーケティングと呼ぶ。
もちろん、その実現には顧客を巻き込む必要がある。

また文化的な問題の解決を目指すのが文化マーケティングである。

社会問題を企業が解決するのは難しいが、問題提起する事は可能。儲けになりにくいのではないかとの懸念もあるがコトラーは「消費者の85%が社会的責任を果たすブランドを、そうでないブランドよりも好み、70%がそうしたブランドが割高であっても利用する用意があり、55%がそうしたブランドを人に広めたいと思っている」としている。

社会不安→社会的コーズ→企業活動にローカライズ(文化マーケティング、社会的責任マーケティング)




2011年6月4日土曜日

7 グローバル化の時代のパラドックス

グローバル化すると、世界はフラットな状況になると考えられるが、それによって広義の民族主義が台頭することとなる。つまりアイデンティティクライシスに陥るのである。そこで寄る辺としての自己を見つめ直す必要にかられるのである。
地域やコミュニティに拠り所を求めた結果として、そうした絆に属する広義の民族主義が広まる。
グローバル化によってこうした民族主義が強まるのだとすれば、皮肉なことである。ただ、その一方で、目の前に見える民族を超えたところにある絆をグローバル化によって見つけられるという側面もある。

また、グローバル化によって、企業は利益を求め海外へと進出することになるが、その結果として雇用の空洞化も促進される。これは社会不安を呼ぶ。

こうした出来事を、グローバル化によるパラドックスと呼ぶ。


6 協働マーケティングとは?

協働マーケティングでは、顧客は消費者ではなくパートナーとしてみなす。
そのためには、企業側がキャラクター化する必要がある。つまり人格を持つ事で顧客が接しやすい環境を作るのである。
キャラクター化した企業とパートナーが接する場がコミュニティとなる。
これが協働マーケティングの3要素である。

2011年6月2日木曜日

5 参加とはなにか?

もちろんソーシャルメディアの隆盛を指す。参加者が増えれば、集合知も増える。そこに魅力が付加され、さらにユーザーが増える。
参加の時代に必要な概念としてあげられるのが、協働マーケティングである。



4 マーケティング3.0とは?

マーケティング1.0「製品管理が主眼」
マーケティング2.0「顧客中心指向」
さらにマーケティングを深化させたのがマーケティング3.0
マーケティング3.0「顧客の深層にある欲求に対し、ミッションやビジョンや価値で対応する」
マーケティング3.0の時代背景として、参加し、グローバル化のパラドックスに対応し、クリエイティブ社会に移行している事が挙げられる。

こうした変化に対応するために、協働マーケティング、文化マーケティング、スピリチュアル・マーケティングが必要となる。






3 ニーズからウォンツに至り、需要になる


コトラー「ニーズとは何かの不足を感じている状態」
ウォンツは、ニーズが形をとったもの。


◯文字を書くという場合。

文字を書くというニーズがまずあり、そのためのペンをウォンツする。
↓つまり
ペンのメーカーは、顧客がペンを欲しがっているのではなく、何かを書きたいのであるという事を理解する必要がある。

ニーズとウォンツを取り違えることを、マーケティング・マイオピア(マーケティング近視眼)という。

つまり一つのニーズに対し、複数のウォンツを作れる事を意味している。
そしてウォンツに購買力が伴って需要が発生する。



2 顧客を創造する


ピーター・ドラッカーは、企業を含めたあらゆる組織を「社会の機関」と定義。そしてこれは、社会やコミュニティ、個人のニーズを満たすために存在している。そのために、顧客を創造する。

つまり、ニーズに応えることで顧客は作れるということ。


ドラッカー「企業は、その目的が顧客を創造することであるがゆえに、二つの、いや、二つだけの基本的な職能をもっている。それはマーケティング(市場開発)とイノベーション(革新)である」

企業の目的=顧客の創造であり、それは、イノベーションと、マーケティングとで達成される。





2011年6月1日水曜日

1 マーケティングとはなにか?





マーケティングとはなにか?


代表的な定義を以下に示す。

フィリップ・コトラー「ニーズに答えて利益を上げること」
ピーター・ドラッカー「販売を不要にしてしまうこと。顧客というものをよく知って理解し、製品(ないしはサービス)が顧客にぴったりと合って、ひとりでに売れてしまうようにすることである」

アメリカ・マーケティング協会(AMA)による定義

2008年
顧客や依頼主、パートナー、さらには社会全体に対して価値のある提案を想像、伝達、提供、そして交換する一連の活動、一連の制度、プロセスである。